インタビュー
ロールモデルインタビュー企画【私のストーリー】
このコーナーでは、福岡キャリア・カフェ統括コーディネーターの村山由香里氏が、ロールモデルの女性に取材インタビューを行い、それぞれのキャリアの転機や今思うことなどを語ってもらいながら、「100人100色ワタシ色」のキャリアを描くためのノンフィクション物語とヒントをお届けしていきます。
第二十一回は、大野 琴美さんにお話を伺いました。

PROFILE
大野 琴美さん
株式会社パソナ 九州第1営業部 福岡第1チーム チーム長
私のストーリー
好きなことを仕事にし、夢中になった花屋の8年間。
株式会社パソナでチーム長を務める大野琴美さん。現在46歳。2022年に宮崎から福岡へ転勤してきた。県外での生活は42歳のその時が初めてだった。
「若い頃は、自分のキャリアについてあまり考えていなかった」という大野さん。調理師専門学校に進んだものの、その資格を生かすことなく事務職へ。30代を前に、改めて「自分は何が好きなんだろう」と考えた。思い浮かんだのが1人暮らしの部屋に飾って楽しんだ花だった。未経験から飛び込んだ花屋では、結婚式や入学式、母の日、葬儀など、人生の節目を彩る仕事に携わった。母の日には3時間睡眠が続くほど忙しく、重い花や資材を扱う肉体労働は過酷でもあった。それでも、お客様の「ありがとう」が何よりうれしかった。

全国大会で入賞する優れた技術のオーナーのもとで、花の扱い方やアレンジメントを一から学び、国家資格のフラワー装飾技能士も取得し、自信をつけていった。夢中で仕事をした8年間、花と向き合い続けた経験は、大野さんの大きな財産になった。
花の仕事は楽しく、お客様に喜んでもらえることにもやりがいを感じていた。しかし、30代半ばを過ぎた頃、考え始める。独身で1人暮らし、収入アップも望めそうにない。体力的な負担もあり、将来を考えるとこのまま続けられない。
「自分は何がしたいのだろう」
迷い、悩んで見つけた自分の軸。「人の役に立ちたい」。
そこで、大野さんは次の仕事を決めないまま花屋を辞める。2つの選択肢を漠然と考えていた。調理師免許を持っているので、花屋とカフェを併設した店を開くか、会社員になるか。
失業保険をもらいながら、職業訓練校に通い、そこで出会ったキャリアコンサルタントとの面談で、「自分は何が得意なのか。何がしたいのか」、何度も話を聞いてもらいながら考えるうちに、ひとつのことに気づいた。「私は人の役に立ちたいんだな」。小さい頃、家族に料理を作り喜んでくれた顔、花屋で人々の人生の節目に寄り添い、喜んでもらってきた経験、すべてがここでつながった。自分の軸を見つけた時だった。
また、訓練校で子育て中の女性に多く出会った。能力が高く、働きたい気持ちもあるのに、勤務時間などの制約によって仕事が見つからない女性たちを目の当たりにして、「こんなに優秀な人たちが、社会で活躍できないのはもったいない」と思ったという。
すべての思いと重なったのが、求人を募集していたパソナだった。「社会の問題点を解決する」という企業理念にも共感し、入社した。
私流リーダーシップ
「数字だけを見る」のではなく、人と一緒に答えを探す
パソナに入社したのは2017年。日給制の営業職から、2年で月給制に。そして2020年に正社員、2021年に宮崎支店長、2022年に福岡へ転勤と、めまぐるしく変化していく。
2020年、コロナ禍で経済が停滞するとそれまでの仕事がなくなった。しかし、いち早く自治体からワクチン接種事業等を受託し、支店は売上全国一位を受賞した。
福岡では、チームの派遣スタッフは5倍の500人規模へ増え、部下の社員も増えた。福岡で働くのは初めてで、プレッシャーも大きかったという。だからこそ、まずメンバーとの関係づくりから始めた。1on1(ワンオンワン)では相手の話を聞くだけでなく、自分のことも話す。
「どういうふうにしていきたい?」「どうやっていこうか?」
数字だけを詰めるのではなく、一緒に考える。高圧的にならず、横並びでカジュアルに話せる関係をつくる。それが、大野さんが目指すリーダーシップだ。周囲に尊敬する上司やマネージャー、仲間がいて、そこから日々学び、自分らしさを加えて研鑽している。

「限られた時間でも、力を発揮できる」——働き方の選択肢を広げる
大野さんがパソナで仕事をする中で、強く心に残っているのが、「働きたいのに、働けない人たち」の存在だった。企業はフルタイムで働ける人を求める一方、子育てや家庭の事情で、限られた時間しか働けない人もいる。
「半日しか働けない人なら、午前と午後で2人雇ってもらえばいい」「何歳からでも、働く環境をつくってあげたい」
時短で働く人たちの優秀さや、限られた時間の中で一生懸命仕事をする姿を企業に伝え、働き方の選択肢を広げていった。実際に働き始めたスタッフが成果を上げることで、受け入れる企業も少しずつ増えていった。コロナ禍のワクチン接種事業では約80人のスタッフを運営し、70代の人が生き生きと働く姿にも接した。
先日、会社の女性管理職研修に参加した。パソナの女性管理職率は50%を超え、女性役員も25%を超えている。全国の素敵な女性たちに会えるのも会社の醍醐味だ。

現在は福岡で派遣・BPO営業チームの責任者を務め、九州の自治体との仕事に関わり視野が広がった。もともと道の駅巡りが趣味で、九州の道の駅をすべて訪ね、「道の駅グランドマスター」の称号も持っている。働く場をつくることから、地域の魅力を伝えることまで。大野さんの「人の役に立ちたい」という軸は、少しずつその範囲を広げている。

私のロールモデル
ロールモデルは、会社の先輩で福岡キャリア・カフェロールモデルでもある宮嶋京子さん。子どもを4人育てながら管理職を務め、言うべきことを臆せず、はっきり伝える。そんな姿に「こういう働く女性になりたい」と憧れてきた。大野さんが宮崎支店で自治体のコロナワクチン接種事業を始めた際、宮嶋さんは福岡支店で現在の大野さんの立場の自治体担当だった。そこで遠隔で伴走してくれたのが最初の出会い。福岡で一緒に働き始めて間近で宮嶋さんの仕事を見て、やっぱりすごいな、と思う。困った時は宮嶋さんに聞く、頼れるお姉さんだ。
社外メンターとして
以下のテーマについて、ご相談に乗ることができます。


取材後記
「私、このままでいいのかな」「私は何ができるのだろう」は、働く女性たちの永遠のテーマだ。転職を繰り返す人もいる。1つの会社に勤めながらも迷い続けている人もいる。それはみんな、「よりよく生きたい」からだ。
大野さんは、「人の役に立ちたい」という「自分の軸」を見つけたのが大きな転機だったという。「自分は何者なのか」を言葉にすることで、人はそこに立ち返っていける。
花屋時代の給料は決して高くなかった。それでも、好きな仕事に夢中になり、技術を磨き、国家資格まで取った。そこで積み重ねた8年間は、花屋を辞めた後も決して消えなかった。キャリアは、今の仕事に直接役立つ経験だけでできているのではない。何かに一生懸命取り組んだ経験は、思いがけない場所で次の力になる。
「私、このままでいいのかな」という迷路から脱出するには、一生懸命に何かに取り組んだ経験と、自分をとことん見つめて軸を見つけること、大野さんのストーリーからその2つが見えてきたように感じた。
(取材・文 村山由香里)

