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インタビュー企画【私のストーリー】第6回:河野友美さん〜副業から始まった文房具のEC店舗。独自のSNSの発信でお客さまをつかむ。〜

福岡キャリア・カフェ ロールモデルインタビュー企画 【私のストーリー】

このコーナーでは、福岡キャリア・カフェ統括コーディネーターの村山由香里氏が、ロールモデルの女性に取材インタビューを行い、それぞれのキャリアの転機や今思うことなどを語ってもらいながら、「100人100色ワタシ色」のキャリアを描くためのノンフィクション物語とヒントをお届けしていきます。

第六回は、河野 友美(かわの ともみ)さんにお話を伺いました。

河野 友美(かわの ともみ)さん
てんのしごと道具店 店主
業種: EC・小売

私のストーリー

いくつものEC店舗の立ち上げを経験した20代

インスタグラムのフォロワー9万5千人、YouTubeのフォロワー5万人(2024年2月現在)。広告は使わず、SNSの発信だけで文房具のEC店舗を運営する河野友美さん。2020年に副業として始めた事業だ。最初は取引先を見つけるのも苦労したが、今では全国50社から文房具を仕入れる。発送業務は、四国の倉庫を拠点に日々連携をとっている。

河野さんが新卒で入社したのは地元神奈川県にあるEC運営会社。携帯ストラップのネットショップを展開し、急成長の最中だった。毎月20人近くが中途入社し、河野さんが会社にいた1年半の間にその会社は一部上場している。20代女性向けストラップのEC店舗を楽天に立ち上げたり、スマホケースの商品企画をしたり、既存ECの再構築をしたり、若さと感性が求められる仕事だった。

もっと集客の勉強がしたいとマッチングアプリの会社に再就職した。検索エンジンからサイトに訪れる人を増やすSEO対策のためのオウンドメディア(自社商品のメディア)を立ち上げたり、インフルエンサーマーケティングに携わった。26歳で退職し、自身のEC店舗を持ちたいと計画していた時、EC部門を作りたいので立ち上げをしてほしいと今治タオルなどを製造するタオル会社に相談された。在宅勤務も副業もOKという条件だった。

副業が本業に。そして海外へ。

まだ関東にいた2020年春、コロナ禍で仕事量が減ったのを機に副業を始めた。インスタグラムで文房具の使い方を書き始めると半年でフォロワーが1万人に増えた。文房具を使って仕事にどんなふうに役に立つかを読者にイメージさせるように書くのがコツだという。EC店舗もモノを売っているとは思えないかわいいサイトで、文房具の活用アイデアが満載だ。

2020年9月、夫とともに福岡に移住した。「地方で暮らしたい」「福岡はECが盛ん」「福岡は起業支援が手厚い」という理由だった。移住後も本業と副業を続け、「これ以上売れたら本業に支障が出る」と副業の発信をセーブしていたが、「今YouTubeを頑張ったら売れるかも」と思うタイミングがあった。2022年秋に退職し、副業を専業とした。

会社員として資金を作りながら小さく副業で起業し、事業を軌道に乗せた今、河野さんは、2年後を目処に海外移住を考えている。世界中に日本の文房具の良さを発信したいと夢は大きい。

私流リーダーシップ

言い出しっぺがリーダーになる

河野さんが最初にリーダーを経験したのは2社目のマッチングアプリの会社で、25歳の頃。若い社員たちが、がむしゃらに働く会社だった。

「SEO対策のメディアを作りたい」と提案するとチームを率いて立ち上げることになった。言い出しっぺがリーダーとして新しいプロジェクトを担当する企業風土で、社内起業で社長になる同年代の社員が何人もいた。男女差も年齢差も正社員と契約社員との差すらなかった。

3社目のタオル製造メーカーには部長職で入社した。EC部門を1人で立ち上げ、売上が上がると部下が増えていった。本社のEC部門に採用されたのは未経験でパソコンすら触ったことのない若い社員。部長の河野さんは福岡、社員は今治、デザイナーなど経験者は東京、大阪と全国に点在して、全員在宅勤務で新しい事業を立ち上げ運営を行った。

チーム全員在宅勤務のマネージメントにバーチャルオフィスで

在宅で仕事してみて、対面より優しくしないといけないと感じたという。対面では雑談程度で済む話が、在宅では会議の時間を作らないといけない。すると、社員は必要以上に重く感じるらしい。部下の細かいミスや抜け漏れは、リストを作って「改善しないとダメだよ」と軽くメールする程度にした。

それでもコミュニケーションに不具合を感じて、バーチャルオフィスを採用した。

「設定したオフィス内で自分のアイコンを人のアイコンに近づけると通話が可能な状態になるんです。『今ちょっと話かけて大丈夫?』と話しかけて、『これ抜けてたよ、チェックリスト作らないと』『わかりました。今作ります』『オッケー。バイバイ』みたいな感じです」。バーチャルオフィスのおかげでコミュニケーションが円滑になったという。

部長職は、責任もあるが予算も自由にでき、楽しかった。ただ、経営会議に参加してもPL(損益計算書)などを勉強していなかったので、どこか自分に不足を感じていたそう。

20代を2、3年サイクルで転職し、管理職も経験し起業した河野さん。目まぐるしく変化するIT業界では人の成長スピードも早い。

私のロールモデル

ロールモデルはSNSで出会った「週末北欧部」のchikaさん。「北欧好きをこじらせた人」を自称しブログを書き、インスタグラムやYouTubeで発信している。カフェでアルバイトしたり、北欧移住を目指して寿司職人になったり紆余曲折の後、今はフィンランドに住んでいる。昨年、chikaさんのブログを一気読みし、「なんでこの人はこんなに素敵な人に出会えるんだろう。人に助けられるというのは裏を返せばめちゃめちゃギブをしているんだろうな」と思ったという。人として尊敬し、海外移住実現の希望となっている。

社外メンターとして

#自分なりのキャリアの見つけ方

#起業・フリーランスの働き方

#DX推進/ITスキル

#その他 副業からの独立・移住

所属事業所概要

てんのしごと道具店                                          社員数:1名

【取材後記】

SNSで発信し、1人でEC店舗を運営するのは並大抵のことではない。話を聞いて、売れる理由は、文房具への愛だと感じた。仕事する自分を助けてくれた文房具、その使い方のアイデアを発信して熱烈なファンをつかんでいる。会社員時代にもいくつものEC店舗を立ち上げてきた河野さんだが、実は、0から1を作るより、1から100にする方が得意だという。2年後には海外移住。海外でどんなものを見て出会って成長し変化していくのだろう。楽しみだ。(取材:文 村山由香里)