インタビュー
福岡キャリア・カフェ ロールモデルインタビュー企画 【私のストーリー】
このコーナーでは、福岡キャリア・カフェ統括コーディネーターの村山由香里氏が、ロールモデルの女性に取材インタビューを行い、それぞれのキャリアの転機や今思うことなどを語ってもらいながら、「100人100色ワタシ色」のキャリアを描くためのノンフィクション物語とヒントをお届けしていきます。
第二十回は、高木 美和さんにお話を伺いました。

高木 美和さん
西部ガス株式会社 北九州リビング営業部長
業種:電気・ガス
従業員数:3,840名(グループ全体)
私のストーリー
「女性目線で考えていい」——任された自由が、仕事の面白さを教えてくれた
西部ガスで北九州リビング営業部長を務める高木美和さん。子育てと介護を担いながら、営業部門のトップとして約70人の組織を率いている。部門長という立場は、現在、女性は3人だけという。
1991年、短大卒業後に入社。お客さまサービスセンターでの電話対応や料金業務など、いわゆる女性職と呼ばれる仕事からキャリアは始まった。転機は入社4年目。女性だけの営業チームが立ち上がり、「何をしてもいいから女性目線で考えてみて」と任された。
顧客調査を行い、料理教室を企画し、イベントを運営する。マーケティングという言葉すら一般的でなかった当時、“お客さま起点”の発想に、仕事の面白さを見出した。以降、ガス機器販促、販売店支援、住宅関連事業、SNS運用など、家庭用営業分野で経験を重ねていく。

時短勤務でのリーダー就任——「自分軸」から「組織軸」へ
2017年、4歳の子どもを育てながら時短勤務中に、未経験分野である住宅開発グループのリーダー就任を打診される。「自分にできるとは思えなかった」。一度は断ったが、上司の「あなたならできる」という言葉に背中を押され挑戦を決意。
専門用語も分からず、キャリアの中で最も苦しい時期だったという。それでも学び続け、周囲に助けを求めながら前進した。
「自分でやる方が簡単。でもリーダーは、メンバーの力を最大化する役割」。
その気づきとともに、視点は“自分軸”から“組織軸”へと大きく転換した。現在は「仕事は楽しく!思いっきりチャレンジ!」を合言葉に、誰もが力を発揮できる職場づくりを目指している。
また、リーダーには、部下のマネジメントだけでなく上を説得する力が不可欠だが、営業経験からの考え方もユニークだ。上司に提案を通す際は「上司はお客さま」という視点に立つという。重視するのは数字か、ビジョンか。上司のニーズを把握し、ロジックだけでなく、共感と対話を重ね組織を動かしてきた。
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私流リーダーシップ
ゼロから立ち上げる楽しさが、人を巻き込む
高木さんは、もともと管理職志向だったわけではない。子育てや介護を大切にしながらプライベートを第一に働くことが軸だった。それでも自ら仕事を面白くし、周囲を巻き込む力があった。
「ゼロからスタートするのはワクワクするんです」
女性営業チームでの経験を経て、販売店支援部署では女性ワーキングチームを立ち上げた。当時家庭でガスを使う主役は女性であるのに、女性社員の多くは事務職に留まっている。「女性社員たちの家庭での経験を仕事に生かしたい。活躍させたい」と、現状を変えたいという思いからだった。そこでは、リーダー職でない高木さんが主担当として女性社員を率いる仕事を任された。リーダーでなくともリーダーの動きをする。それは一社員でもできることを証明してきた。それをチャレンジさせてもらえる上司にも恵まれた。
さらに北九州リビング営業部のInstagram「がすまる部屋」を監修し、フォロワーは1万5千人を超えた。地区独自SNSとしては異例の成果を上げ、全国のガス会社の前で事例報告を行うまでになった。旗を立て、仲間を増やし、形にする。その積み重ねが信頼へとつながっていった。
背伸びをしない覚悟が、組織を強くする
52歳のときにマネジャーに昇進、管理職になった。その2年後、部門長に昇進した。
目指したのは、「ついてこい」と引っ張るリーダー像ではない。それぞれの強みを見極め、「あなたはここが得意」と伝えながら力を生かす伴走型のマネジメントだ。
子育てと母の介護を抱えながらの部門長。着任時には社員の前で、自身の家庭環境と「これまでの部門長と同じ働き方はできない」と率直に伝えた。部門長として決断し責任は取ると。飲み会やゴルフは最小限に抑えている。高木さんの思いに共鳴し、フォローアップしてくれる仲間たちに恵まれ、やりがいを感じている。
「完璧にはできない」と腹を括ったとき、人との関係はむしろ強くなった。無理を前提にしない“持続可能なマネジメント”。それが高木さんのリーダーシップである。

私のロールモデル
「特定のロールモデルはいません」と高木さんは言う。
圧倒的な行動力を持つ女性リーダー、スマートに組織を動かす部門長、部下の悩みに寄り添う上司。尊敬する人は数多くいるが、誰かの型をそのままなぞろうとは思わなかったし、子育て中の女性上司もいなくてできなかった。
子育てや介護という環境の中で働く自分には、自分なりのやり方がある。共感できる部分だけを取り入れ、背伸びはしない。
「万人に好かれることはありません。自分のやることを信じて、のびのびと自分らしくやればいい」
社外メンターとして
以下、テーマについて御相談に乗ることができます
#自分なりのキャリアの見つけ方
#子育てとの両立
#介護との両立
#ワーク&ライフの楽しみ方
【取材後記】
働き方改革が進んできたとはいえ、日本の企業ではいまだに旧来型の男性管理職が多数を占めているのが現状だ。飲み会やゴルフが、暗黙の「管理職への登竜門」のようになっている職場も少なくない。そんな中で、子育てや介護を担いながら「プライベートも大切にする」と公言する高木さんの存在は、新しいリーダー像のひとつと言えるだろう。実は、そんな上司を待っていた若い社員も多いのではないだろうか。
「管理職はやりがいがある。その人らしい管理職をすればいい」。
実体験から語られるその言葉には説得力がある。高木さんに続くようなリーダーが、福岡の企業にも少しずつ増えていくことを期待したい。
(取材・文 村山由香里)
福岡県女性人材育成のためのネットワーク形成事業