インタビュー
福岡キャリア・カフェ ロールモデルインタビュー企画 【私のストーリー】
このコーナーでは、福岡キャリア・カフェ統括コーディネーターの村山由香里氏が、ロールモデルの女性に取材インタビューを行い、それぞれのキャリアの転機や今思うことなどを語ってもらいながら、「100人100色ワタシ色」のキャリアを描くためのノンフィクション物語とヒントをお届けしていきます。
第十五回は、夏脇 栄子(なつわき えいこ)さんにお話を伺いました。
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夏脇 栄子(なつわき えいこ)さん
プロスペリティ
代表
業種: スタイリスト
私のストーリー
副業で週末スタイリストに転身
ショッピング同行やクローゼット診断、テレビ局のファッション企画など、スタイリストとして幅広く活躍する夏脇栄子さん。2015年に副業としてスタートし、2017年には、スタイリスト業に軸足を移し、正社員だった英文校正の会社を週2日勤務の契約社員に変更した。現在も二足のわらじで仕事をしている。
副業を始めた理由は、「もう一つ仕事の軸が欲しかったから」。何をするか決めず、ある起業塾に参加した。講師との面談で「人を見ると、あの服をあんなふうに変えたら素敵になるのにとよく思う」と話すと、思ってもいないアドバイスが返ってきた。
「スタイリストが向いているのでは?」
人が着ているものに目がいき、より良いスタイルを想像することは、夏脇さんにとって小さい頃から当たり前のこと。だからこそ、特別なスキルだとは思っていなかった。
「SNSで発信し何かを売る」授業で、試しにショッピング同行を紹介してみた。顧客の変化をFacebookにアップすると、瞬く間に反響が広がり、4か月先まで予約が埋まった。

業界未経験でも、自分の感覚と海外経験で地位を確立
平日はフルタイムで働き、土日はショッピング同行。こうして、スタイリストとしての第一歩を踏み出した。39歳で出産し、当時子どもはまだ2歳。寝る暇もないほど忙しい日々だったという。
実は、夏脇さんは、ファッションを学んだ経験もなく、業界未経験。短大卒業後、営業事務としてキャリアをスタートしたが、当時の仕事はお茶くみとコピー取りが中心だった。ある上司からの「男性の言うことだけ聞いていればいいんだよ」という言葉に違和感を覚え、「自分でものを売りたい」と3年で退職。その後、英会話学校、化粧品と販売の仕事を経て、本領を発揮するようになる。
23歳で訪れたハワイで雷を撃たれたような衝撃を受け、「海外に住んでみたい」と思った。25歳でワーキングホリデーを利用し、オーストラリア、ニュージーランド、ロンドンでも過ごした。1回目の結婚を機にドバイへ移住。日本発着便の就航を控えたエミレーツ航空で職を得た。
もともとのファッションへの関心に加え、海外生活を通じて日本とは異なる色合わせやファッションセンスに触れて感覚を磨いたことが、現在の夏脇さんの強みになっている。

私流リーダーシップ
「似合うファッションはその人の魅力を倍増させ、人生を変える」
「洋服は利益率が高い投資ではないか」という夏脇さん。自分が輝く服を着ることで面接に受かったり、キャリアアップにつながったりする。
実際、夏脇さんは、採用試験に落ちたことがない。エミレーツ航空では、独身しか採用しないキャビンアテンダント職に既婚で応募し、最終試験まで通過、地上職で採用。
離婚後、福岡に戻り、外資系金融機関で6年勤務。面接でブランチマネージャーから「たくさんの候補者と面接したが、あなたに決めた」と言われた。その決め手はファッションにあったと確信している。
今、夏脇さんは、顧客に寄り添い、ファッションを通じてその人の魅力を引き出し、より良い人生を送るためのサポートをしている。
「なりたい自分」を遠慮しないで
顧客には、「3歩先の未来へお連れします」というタイトルのヒアリングシートを渡し、「1年後、どんな自分になりたいか」「明日どんな自分になりたいか」などを書いてもらう。しかし、多くの女性たちは、「本当になりたい自分」を遠慮して書かない。
「恥ずかしくて書けない」「私なんてなれるわけない」と考えてしまうのだ。だからこそ、夏脇さんは何時間も対話を重ね、本心を引き出す。顧客の心を解き放ち、ファッションで「3歩先の未来」へ導くのが夏脇さんの仕事だ。
「日本人は人の目を気にしがちですが、海外では好きな色を自由に身につけ、自分自身を輝かせています。ファッションは、自分が楽しむもの。『なりたい自分』を遠慮せずに表現してほしい」
テロの影響でアメリカに行けずにドバイへ。リーマンショックによる解雇。高齢出産や子育て、親の介護など、自分の意図しない出来事で人生が変わる経験を何度もしてきた夏脇さん。だからこそ、「仕事の柱をしっかり築き、外部要因に振り回されない人生を送りたい」と考えている。

私のロールモデル
ロールモデルは、ブランドプロデューサーの柴田陽子さん。企業のブランディングをしている方で「勝者の思考回路」「あなたの味方が増える魔法のToDoリスト」「はじめてリーダーになる人の教科書」など著書も多く、よく読んでいる。講演会に行き、15分間のコンサルタントを受けた際、「ボールを待っていてもやってこない。自分ができることをパッケージにして投げる人にならなければいけない」と言われ、ハッとした。「私にとってはすごい人です」。
社外メンターとして
#自分なりのキャリアの見つけ方
#子育てとの両立
#子育て期の離職(休職)を経てのキャリア形成
#結婚・出産のライフプランと キャリア
#起業・フリーランスの働き方
#管理職へのチャレンジ
所属事業所概要
プロスペリティ
従業員数:1人
【取材後記】
ブログとFacebookで発信し、未経験にも関わらずスタイリストという職業を確立した夏脇さん。ドバイでのメッカ巡礼の人たちの話、オーストラリアでのホームパーティの話など他にも興味深い話題はいっぱいだった。「子どもの頃に好きだったこと」「海外生活で感覚を磨いたこと」、この2つが見事に融合して、スタイリストに生かされている。「何かしたいけどわからない」と迷っている人は、まず小さい頃の興味を棚卸ししてみるといいかもしれない。(取材・文 村山由香里)