インタビュー
福岡キャリア・カフェ ロールモデルインタビュー企画 【私のストーリー】
このコーナーでは、福岡キャリア・カフェ統括コーディネーターの村山由香里氏が、ロールモデルの女性に取材インタビューを行い、それぞれのキャリアの転機や今思うことなどを語ってもらいながら、「100人100色ワタシ色」のキャリアを描くためのノンフィクション物語とヒントをお届けしていきます。
第十三回は、園田 理恵(そのだ りえ)さんにお話を伺いました。

園田 理恵(そのだ りえ)さん
九州電力株式会社
久留米営業センター長
業種: 電気・ガス
私のストーリー
システム開発の分野からスタートし管理職へ——変化を恐れず挑戦し続けた30年
園田理恵さんは現在、九州電力の久留米営業センター長。センターのトップとしてリーダーシップを発揮するだけでなく、地域の行政や企業トップと会い、つながりの中から新たな事業を作るのも重要な仕事だ。
園田さんのキャリアの始まりは同社の情報通信部だった。1990年初頭、企業のデジタル化が進みつつあった頃である。大学で情報工学の最先端を学んだ園田さんだったが、大会社の情報システムはホストコンピューターが主流で、一世代前のものと感じた。学んできたことと現実のギャップに驚きつつも、「現実に会社を動かしている生きたシステムのしくみを知って、その運用に携わることが面白くて仕方なかったんです」と振り返る。
入社2年目から社内のパソコンネットワーク構築の仕事に携わる。社内システムの設計や人事労務業務の改革、ダイバーシティ推進と、30年余り次々と新しい仕事に挑戦してきた。キャリアの分岐点の一つは、30代後半での昇進昇格。同期の多くが先に昇進する中、子育てとの両立を考えながら、自分のペースで進んできた。

「子どもが出世競争から切り離してくれた」。仕事をやり切ったから育休も楽しめた。
20代後半、仕事に没頭するあまり、気がつくと周りは結婚していた。いつかは結婚するだろうと思い描いていたが、「このままでは結婚できないかも」と不安になった瞬間だった。「急に世界でひとりぼっちになったような気分になったんです」。それからは、仕事で会う人もさりげなく指輪をしているかどうかチェックしたり、合コンに行ったり、婚活に邁進した。27歳で現在の夫と出会い、1年足らずで結婚。
「あんなに焦ったのに、案外近くにいい人がいたんですよね」
出産後、最初の育休では「自分の生活を楽しむ」という新たな視点を得てうれしかったという。復職後、子どもがいることで出世競争からは一歩引く形になったが、それを悲観することはなかった。「子どもが出世競争から切り離してくれて、気楽になれた」。同期からかなり遅れて昇進試験を受け、39歳で管理職に。育児を経験したことで、働き方の多様性やチームでの支え合いの重要性を実感し、それが後のダイバーシティ推進にもつながっていく。

私流リーダーシップ
憧れのリーダーは、大きく包み込み、立ち居振る舞いも穏やか
管理職になって大きなプロジェクトに携わった後に、初めての転勤を経験。その後、本店に戻り43歳でダイバーシティ推進グループ長に就任した。ちょうど国全体が女性活躍へ大きな舵を切る変化の時だった。女性活躍推進法が施行され、企業は行動計画の公表が義務付けられた。会社のダイバーシティ推進の施策を練り、会社としての言葉を発しなければいけない。
それまで、園田さん自身はダイバーシティと向き合ったこともなかった。いろんな人に会い、懸命に勉強した。1年目は鬱になるのではと思うくらいプレッシャーだったという。1回目の行動計画は部内のグループ長が総出で作り上げた。自分が情けなくてたまらなかった。
「私が右往左往する様子を見ていて全部終わった後、上司が部屋に呼んで『どうだった?』とレビューをしてくださったんです。柔らかい物腰で穏やかに聞いて自らを振り返らせてくれる。育てられてるんだなあ、と涙がでました。こんな穏やかで深いリーダーになりたいなあと思いました」
ダイバーシティ推進に邁進することで、生きる意味、仕事をする意味も深まった
ダイバーシティ推進のリーダーになると、福岡県内の女性管理職ネットワーク「We-net」での活動が加わった。そこでリーダー像に対する価値観が大きく変わったという。
企業の女性管理職たちが率直に悩みを語り、意見を交わす姿を見て、「わからないことを聞いてもいいんだ」と肩の力が抜けた。それまで『リーダーはなんでも知っていて道を示さなければいけない』と思い込んでいたのだ。会社は違っても同じ悩みを共有できる仲間ができたことは大きな支えになった。
また、自分の信念や意識で世の中を変えようとしている人たちと出会って、「では、九州電力は何をしている会社だろう」と改めて考えた。「電力を送るインフラ」「社会の基盤を作っている」。それまで一生懸命に仕事をしてきたが、仕事の意味について深く考えたのは初めてだった。
そこから、「何のためにこの仕事をしているのか」「何のために生きているのか」と思索は深まり、改めて「電気を送る」仕事を誇りに思えたという。
ダーバーシティ推進に携わった5年間は、「自分の人生に深みを与えてくれた」大事な時期だった。

私のロールモデル
プレッシャーで押しつぶされそうな時に穏やかに話を聞いてくれた上司、そして女性の部下。ダイバーシティ推進の管理職セミナーで九州内の全支店を回る時、男性管理職たちの反応が怖かった。なかなかGOを出せない私に、女性の部下は「これで行きましょう!何かは伝わると思います!」と背中をものすごく押してくれた。彼女の思い切りの良さを、今でも時に思い出すという。また、We-netで出会った他業種の女性リーダーたちも刺激を与え合う仲間であり、ロールモデルだ。
社外メンターとして
#管理職へのチャレンジ
#自分なりのキャリアの見つけ方
#子育て期の離職(休職)を経てのキャリア形成
#子育てとの両立
#結婚・出産のライフプランと キャリア
所属事業所概要
九州電力株式会社
従業員数:12092人
【取材後記】
「We-netで村山さんに出会って開眼だったんです。企業の社長であんなに柔らかくて明るい人がいる。救われました」と聞いて驚いた。男性リーダーがほとんどの職場で自分らしいリーダー像を模索していた園田さんに、少しでも影響を与えられたのならうれしい限りです。あれから10年余り。50代半ばになった園田さんは、管理職としてバリバリ仕事しながらも、定年後のセカンドライフを見据えて新たな行動を始めたようです。(取材・文 村山由香里)